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学生若手優秀賞
安全なナノマテリアルの創製に向けた免疫毒性評価:非晶質ナノシリカによる新たな免疫作用
平井 敏郎
( 大阪大学大学院薬学研究科毒性学分野 博士後期課程1 年)

 この度は、第19回日本免疫毒性学会学術大会において、学生・若手優秀発表賞を賜り、大変光栄に存じます。選考委員の先生方に心より御礼を申し上げますと共に、日本免疫毒性学会学術大会での発表において、種々叱咤激励を賜りました諸先生方にこの場をお借りして御礼申し上げます。また、ご指導頂いております、大阪大学大学院薬学研究科毒性学分野・教授 堤 康央先生、准教授 吉岡靖雄先生、助教 東阪和馬先生を初めとする先生方、研究生活・私生活における良き仲間である毒性学分野の学生一同に深謝致します。

 今回、私は、「安全なナノマテリアルの創製に向けた免疫毒性評価:非晶質ナノシリカによる新たな免疫作用」という演題で発表致しました。近年、100nm以下の素材であるナノマテリアルの使用が様々な産業で広がっており、その安全性確保が急務となっています。本観点から我々は、有用かつ安全なナノマテリアルの創製に資する基盤情報の収集を目指したナノ安全科学研究を推進しています。特に私は、医薬品は言うまでも無く、食品・香粧品分野で最も汎用される非晶質ナノシリカを用い、曝露実態の定性解析・ハザード同定を試み、過剰量の皮内曝露であるものの、ナノシリカがアレルギー応答を亢進する可能性を見出しました(Hirai T et al. Part. Fibre Toxicol. 2012)。そこで本検討では、ナノシリカの皮膚塗布が、アトピー性皮膚炎に及ぼす影響を評価しました。その結果、ナノシリカの皮膚塗布は、アトピー病態の誘導には影響を及ぼさないものの、IgG/IgEの産生バランスを変化させることで、アナフィラキシー応答に対する感受性を高めることを認めました。近年、アトピー性皮膚炎のみならず、喘息や食物アレルギーなど、様々なアレルギー疾患において、経皮からのアレルゲン感作が重要な働きを示すことが明らかとなってきています。従って、本結果を踏まえると、アレルゲンと共に、ナノシリカなどの環境要因が存在することで、経皮アレルギー感作が促進されてしまう可能性も考えられます。今後は、本現象のメカニズムを解析すると共に、ナノ免疫毒性にフォーカスしつつ、ナノ安全科学の観点から、ナノマテリアルの安全使用や免疫毒性学の進展に寄与したいと考えております。

 今回の発表が、本学会での初めての発表になりますが、多くの先生方からご指導・ご助言を頂きました。また、同年代の学生の方と意見交換する中で、自らの研究に対する熱い気持ちを再認識し、良きライバルとして切磋琢磨しながら研究活動に取り組みたいと考えております。今後は、本賞を頂いたことを励みに、免疫毒性学領域に貢献できる夢ある研究を、鋭意推進していきたいと考えています。免疫毒性学会の先生方には、今後ともご指導・ご鞭撻を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。
 
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