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第21回日本免疫毒性学会学術大会報告
姫野誠一郎
徳島文理大学薬学部

 

平成26年9 月11日(木)、12日(金)に徳島文理大学国際会議場にて、第21回日本免疫毒性学会学術年会を開催しました。今年度より学術大会から学術年会に名称を変更しました。

昨年度に第20回大会が記念大会として開催され、これまでの日本免疫毒性学会の歩みの集大成が行われたことを受けて、第21回学術年会のテーマは「免疫毒性学研究の新たな一歩」としました。次の世代の免疫毒性学を担う若手の活躍を期しての「新たな一歩」です。

これまでに奨励賞を受賞した小池英子先生(国立環境研究所)、中村亮介先生(国立医薬品食品衛生研究所)、西村泰光先生(川崎医科大学)、吉岡靖雄先生(大阪大学薬学部)の4 名に実行委員会に加わっていただき、シンポジウム「次世代の免疫毒性研究を考える」( 1 日目)を企画していただきました。このシンポジウムの趣旨は、次世代の免疫毒性研究を進める上で重要となる「予測」「探索」「解明」「応用」の4 つの観点から、それぞれの分野の第一人者に最先端の研究を紹介していただき、将来の免疫毒性研究のあり方を考える、というものです。予測につながる理論生物学として、望月敦史先生(理化学研究所基幹研究所)に「生命システムの動態をネットワーク構造のみから理解する」、探索につながるケミカルバイオロジーとして、叶直樹先生(東北大学大学院薬学研究科)に「有機小分子と蛋白質の相互作用を直接的・間接的に検出する」、解明につながる炎症研究として、後藤孔郎先生(大分大学医学部)に「肥満に伴う全身性炎症性病態における脾臓由来IL-10の役割」、応用につながるワクチン研究として、石井健先生(医薬基盤研究所/大阪大学免疫学フロンティア研究センター)に「ワクチンの副作用は予測できるか? 安全なアジュバントとバイオマーカー開発の新展開」とのタイトルで講演を行っていただきました。免疫毒性学の新たな息吹を感じさせるシンポジウムとして、アンケートでも非常に好評でした。

特別講演T( 2 日目)は国際化委員会のご協力を得て、医薬品の抗原性と免疫毒性に関する講演をMarc Pallardy 先生(Universite Paris-Sud, France)にお願いしました。 "Immunogenicity Assessment of Biotechnology-derived Pharmaceuticals"とのタイトルでの講演を予定していましたが、さらに焦点を免疫毒性に絞りたいとのPallardy 先生の提案により、当日の講演では"Immunotoxicity of Biologics"にタイトルを変更しました。

特別講演U( 2 日目)は、川村龍吉先生(山梨大学医学部皮膚科学講座)による「亜鉛欠乏による皮膚炎発症メカニズム」、教育講演( 1 日目)は、峯岸克行先生(徳島大学疾患プロテオゲノム研究センター)による「高IgE症候群の病因と病態の解明」をお願いしました。

試験法ワークショップ( 2 日目)は、「アレルギーと自己免疫疾患の新たな試験法を目指して」をテーマとして、井上智彰先生(中外製薬(株))による「バイオ医薬品の投与により発症する自己免疫疾患、免疫系を介した副作用」、福井元子先生(あすか製薬(株))による「抗甲状腺薬投与ラットにおける自己免疫疾患を示唆する脾臓病変」、安達玲子先生(国立医薬品食品衛生研究所)による「食物アレルゲンの経皮感作による即時型アレルギーモデル」、西野里沙子先生((財)残留農薬研究所)による「大気中の粒子状化学物質により誘発される呼吸器アレルギー検出法開発における検討」との演題で講演していただきました。

一般演題は口頭発表が15演題、ポスター発表が23演題でした。そのうち、学生・若手発表が5 演題あり、この5 演題については、口頭とポスターの両方での発表に基づいて学生・若手優秀発表賞を選考しました。また、それ以外の一般発表から年会賞を選考しました。学生・若手優秀発表賞は、平井敏郎氏ら(大阪大学大学院薬学研究科毒性学分野)の「金属アレルギー発症におけるナノ粒子の役割」、および、小沼盛司氏ら(千葉大学大学院薬学研究院高齢者薬剤学研究室)の「ヒスタミンH4受容体拮抗薬の長期外用ステロイド療法に伴う?痒予防の有用性」が受賞しました。また、年会賞は、小池英子氏ら ((独)国立環境研究所)の「ビスフェノールAの経気道曝露がアレルギー性気道炎症モデルマウスの免疫系および神経系に及ぼす影響」が受賞しました。今回、初めての試みとして、学生・若手優秀発表賞の選考を1 日目のうちに行い、懇親会の場で表彰を行いました。懇親会に多くの学生と若手研究者が参加して盛り上がりました。

学会賞は大沢基保先生((一財)食品薬品安全センター秦野研究所/帝京大学)が受賞し、「重金属を中心とする環境物質による免疫毒性の特性と評価」とのタイトルで受賞講演を行っていただきました。今回、残念ながら奨励賞の対象者がいませんでしたが、奨励賞の選考基準が変更されたこともあり、今後に期待したいと思います。

記念となる20回大会の次の年ということで、今後の免疫毒性学会を担う若手・中堅が活躍できる場を提供したいと考えました。発表内容だけでなく、若手・中堅を中心に質疑応答も非常に活発に行われ、多少なりともその責任を果たせたのではないかとほっとしています。

当日の写真:http://p.bunri-u.ac.jp/jsit2014/photo.html

 
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