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第17回日本免疫毒性学会学術大会報告
藤巻 秀和
(独立行政法人国立環境研究所)

 平成22年9月9日(木)、10日(金)に独立行政法人国立環境研究所の大山記念ホールにて、第17回日本免疫毒性学会学術大会を開催しました。前日は、台風の直撃で開催が危ぶまれましたが、年会当日は晴れの良い天気に恵まれました。

 学術大会のテーマは、「感受性を考慮した免疫毒性研究の新展開―環境・遺伝・時間要因」で、1日目のA.Dean Befus先生(University of Alberta)による招聘講演"Mast cells and their regulation: Allergy, but so much more-innate to adaptive immunity"、三宅健介先生(東京大学医科学研究所)による特別講演「自然免疫システムにおける病原体認識の分子基盤とその制御機構」は自然免疫と獲得免疫に関わる肥満細胞とTLRのそれぞれ先端の免疫のトピックスを学ぶのに相応しい内容のご講演でした。

 シンポジウム「免疫毒性を修飾する感受性要因」では、Gary R. Burleson先生(BRT-Burleson Research Technologies, Inc.) による「Influenza viral disease: Dexamethasone and the role of age and genetics on viral disease severity」の講演を皮切りに、石井哲郎先生(筑波大学大学院)による「マクロファージの抗酸化ストレス応答ー転写因子Nrf2と誘導タンパク質の役割」、欅田尚樹先生(国立保健医療科学院)による「低濃度揮発性有機化合物曝露による免疫毒性」、市瀬孝道先生(大分県立看護科学大学)による「黄砂とアレルギー」、手島玲子先生(国立医薬品食品衛生研究所)による「発達期暴露による臭素化難燃剤等の免疫影響について」と新たなトピックスの御紹介をいただき、感染、酸化ストレス、VOC、アレルギー、発達期などのキーワードにみられるようにそれぞれの感受性要因の新たな展開が窺えました。全体討論の時間が取れなかった点は反省材料です。

 2日目の教育講演では「アレルゲン性試験法の現状と課題」を日本免疫毒性学会理事長の澤田純一先生にわかりやすくお話いただき、試験法ワークショップ「免疫毒性試験法の最近の動向―インシリコからインビボまでー」では、Lonza社Philippe Stas先生による「In silico prediction of immunogenicity: sense and non-sense」、小島肇先生(国立医薬品食品衛生研究所)による「皮膚感作性試験のインビトロ代替法の現状」、森香奈子先生(武田薬品工業)による「KLH-TDAR試験法の国内バリデーション研究1−実験条件の検討−」、河井良太先生(第一三共株式会社)、永山裕子先生(エーザイ株式会社)による「KLH-TDAR試験法の国内バリデーション研究2−免疫毒性物質を用いた検討−」がご紹介され、活発な討論が行われました。

 一般演題では 口頭発表で22題、ポスター発表で17題の発表がありました。各講演間の移動、休憩時間が短かかったので、口頭発表を減らして、その分ポスター発表を充実させたほうが良かったことに気づきました。

 今回の学会の年会賞は、黒田悦史、森本泰夫氏(産業医科大学)の「粒子状化学物質による自然免疫の活性化とII型免疫反応の誘導」が、奨励賞は小島弘幸氏ら(北海道立衛生研究所)の「農薬200物質におけるレチノイド関連オーファン受容体(ROR)活性の探索とIL-17産生に及ぼす影響」がそれぞれ受賞されました。また、今回の目玉企画の一つであります2日目の学生セッションでの優秀賞は岡村和幸君ら(筑波大学)の「無機ヒ素曝露によるリンパ球増殖抑制に関わるp130増加のメカニズム」が受賞されました。各発表内容はレベルが高く甲乙が付けにくく、僅少差であり審査員泣かせでありました。

 免疫毒性研究会から脱皮して免疫毒性学会へと成長したことが実感できた年会ではなかったかと言われましたが、年会の運営では何点かの反省材料もありましたので今後にいかしていただきたいと考えております。最後に、本年会に協賛、共催、ご協力いただきました学会、企業の皆様に厚く御礼申し上げます。また、年会の実行委員会、事務局およびスタッフの皆様に心より感謝申し上げます。
 
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