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第16回日本免疫毒性学会、第55回日本産業衛生学会
アレルギー・免疫毒性研究会開催の報告
吉田 貴彦(旭川医科大学健康科学講座)

 2009年8月27・28日の2日間にわたって、旭川市の旭川市民文化会館小ホールおよびホワイエにおいて、第16回日本免疫毒性学会学術大会を、日本産業衛生学会アレルギー免疫毒性研究会第55回研究会と共催にて開催いたしました。

 本学会が免疫毒性研究に特化した小規模な学術集会であることから、講演会場も一つとし全参加者が全ての発表に触れることで学会員の相互の情報共有を図るアットホームな雰囲気を保つとの方針にのっとり、かつ10分間の口頭発表に加えて質疑応答を5分間とるなどに十分な時間を取ることで、互いの学問的な向上につなげることを目指しました。さらに、本学会が目指す国際化に合わせて、海外からの参加者にも理解していただきやすくすることを意識して講演集の英文スペースの拡大と、発表(スライド、ポスターともに)の際の図表などの英文表記を心がけることへの協力を得るなどの工夫を図るなど、新しい試みを取り入れました。特別講演、シンポジウム、ランチョンセミナーなどの発表に6名の海外からの参加が得られ、総数163名の参加者でした。しかし、折からの経済不況のために昨年に数演題の参加があったアジア諸国からの参加者が無かったことは残念でした。

 今回の学術会議では、「免疫と子ども」というテーマを設定しました。少子高齢化が進む我が国にあって、次世代を担う子どもの健全な発育が望まれています。特別講演1として、米国国立環境健康科学研究所(NIEHS, NIH)のDori R. Germolec先生には、「Does immunomodulation early in life increase disease risk in children and beyond?」という演題にて、ヒトの発生段階から幼小児期に受ける免疫変容が子どもの現在から将来にかけての疾病発生に影響するかという内容で講演をしていただきました。動物実験を用いた基礎的研究から、ヒトでの疫学研究の結果を総合的にまとめ公衆衛生的な意義にまでふれる内容の濃い講演であり、当日午後の学会テーマと同じ名称のシンポジウムにつながる意義深いものでした。シンポジウム「免疫と子ども」は、自治医科大学の香山不二雄先生、塩野義製薬の中村和市先生の座長により進めました。東京大学大学院医学系研究科分子予防医学の石川昌先生に「ダイオキシンによる腸管免疫の破綻とアレルギー感作」、千葉大学予防医学センターの森千里先生に「胎児の複合汚染とアレルギー疾患との関連、そして次世代の健康を守るための化学物質の健康診断システム」、米国ニューヨーク大学のJudith T. Zelikoff先生に「Prenatal exposure to cigarette smoke increases tumor susceptibility of juvenile mice via changes in anti-tumor immune mechanisms.」の演題で講演をしていただき、活発な討論がなされた。なお、午後のプログラムの初めに総会を開催しました。初日のプログラムの後に、旭川グランドホテルにて懇親会を開催し、米国のSociety of Toxicology, Immunotoxicology specialty section (SOTITSS)との交流事業について本学会担当理事の中村和市先生から両学会の交流についての説明をうけ、引き続きSOTITSSより本学術大会に派遣されたZelikoff先生からコメントをいただきました。また、学会事務局の大槻先生によるピアノの弾語りの余興があるなど、学会員の親睦が図られた。

 大会2日目の特別講演2では、全国的な人気スポットとなった旭川市旭山動物園の小菅正夫名誉園長に「旭山動物園の役割」として講演を受け、世界の歴史の中で果たしてきた動物園の意義と旭山動物園が先駆的に取組んでいる新しい動物園像について聞かせていただいた。同日午後には、免疫毒性試験法についてのワークショップ「免疫毒性試験法の標準化−KLMを用いる抗体産生応答試験(TDAR)−」を行ない、製薬企業の安全性試験を担当する部署に所属する先生により、「KLH-TDARの標準化を議論するにあたって」(筒井尚久先生)、「ラットを用いたkeyhole limpet hemocyaninを用いるT cell dependent」(河井良太先生)、「武田におけるKLH-TDAR試験法について」(森香奈子先生)、「市販のKLH抗体ELISA kitを用いたTDAR法−SRBC法との比較−」(小松弘幸先生)、「抗KLH IgMおよびIgG抗体産生量を指標としたTDAR試験系の検討」(原田英樹先生)の発表があり、本学会が社会的に果たすべき役割の一つが担われました。両日合わせて一般演題は、22題の口演と13題のポスターの発表があり、いずれも熱心かつ活発な討論がなされました。

 全体を通して、世界的な経済不況と地方開催であるための参加者の減少があったものの、十分な発表数があり、発表内容も充実しており、好評のうちに閉会することが出来ました。ご参加いただきました方々を始め、学術大会の運営にご支援いただきました各団体、各位に心より御礼申し上げます。
 
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