ImmunoTox Letter

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新評議員より
評議員就任にあたって

石井 明子
国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部

石井明子先生
石井明子先生

 このたび日本免疫毒性学会の評議員を拝命いたしました国立医薬品食品衛生研究所の石井明子と申します。ご推薦頂きました先生方、ならびにご承認頂きました理事及び会員の先生方に厚く御礼申し上げますとともに、本紙面をお借り致しまして、皆様にご挨拶申し上げます。

 私は、京都大学大学院薬学研究科修士課程を修了後、3年間の製薬企業での勤務を経て、国立医薬品食品衛生研究所に入所いたしました。国立医薬品食品衛生研究所では、生物薬品部に所属し、一貫してバイオ医薬品の品質・安全性評価に関する研究を行っており、現在は、バイオ医薬品の中でも抗体医薬品を主な研究対象としております。

 国立医薬品食品衛生研究所は、本学会の設立や医薬品の免疫毒性試験に関するICH S8ガイドライン策定に関わられた旧機能生化学部の澤田純一先生や手島玲子先生がご活躍されていた研究所であり、現在も、本学会の理事を務めておられる斎藤嘉朗先生、評議員の中村亮介先生らにより、免疫毒性に関する研究が精力的に行われている環境にあります。私が所属しております生物薬品部は、これまで品質に関する研究が中心でしたが、最近は、ヒト細胞を用いたin vitro評価系の開発や、生体試料中薬物濃度分析法、免疫原性評価法に関する研究等、非臨床・臨床に関する課題にも研究対象を広げております。

 バイオ医薬品は、有効成分が高分子であるため、免疫原性がしばしば問題となります。欧州では、過去に、遺伝子組換えエリスロポエチンの製剤処方変更に際して中和抗体出現による重篤な有害事象の発生を経験していること、米国では、規制当局やアカデミアにおいて、タンパク質凝集体と免疫原性に関する関心が高いこと等から、バイオ医薬品の免疫原性に関する研究が盛んです。EMA及びFDAでは、免疫原性評価に関するガイドライン/ガイダンスの策定・改訂がなされており、最新の科学的知見を取り入れた規制環境整備が進んでいます。一方、日本では、国内企業により開発されたバイオ医薬品が少ないことや、幸いにも免疫原性が大きくクローズアップされるような有害事象を経験していないこともあり、バイオ医薬品の免疫原性に関する研究や規制環境整備は、欧米に比べて遅れている状況にあると思います。

 バイオ医薬品の開発、承認審査、適正使用に際して、免疫原性の予測・評価は、極めて重要な課題であり、日本でのバイオ医薬品開発が推進されている近年の状況からも、抗薬物抗体評価法の開発と標準化、ならびに免疫原性に関わる品質及び臨床的リスク因子の特定とリスク低減策の構築について、より一層、注力していく必要があると考えております。また、サイトカイン放出症候群等の有害事象の機序解明や評価系構築も重要な課題です。これらの研究と学術年会での発表を通じた情報発信を中心に、微力ではございますが、本学会の発展に少しでも貢献できるよう努力して参りますので、今後ともご指導ご鞭撻賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。