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免疫毒性学会の参加のきっかけとなった「免疫学のDirty Little Secret」
黒田 悦史
(大阪大学免疫学フロンティア研究センター ワクチン学研究室)

この度、免疫毒性学会の評議員に就任させていただくことになりました、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの黒田と申します。まだ本学会員としても経験の浅い私に、本学会の評議員としてご推挙頂きました川崎医科大学の大槻剛巳先生および産業医科大学の森本泰夫先生に心より感謝いたします。

私が本学会へ参加するきっかけとなったのは2008年にNature誌やScience誌をにぎわせていた粒子状物質とインフラマソームの研究論文からでした。これらの研究論文を読み、粒子状物質による自然免疫の分子レベルでの活性化メカニズムに興味がわき、研究を始めました。免疫学の分野でよく用いられていた粒子状物質としてはアルミニウム塩(アラム)、シリカ、アスベスト、尿酸塩結晶などが挙げられます。このような粒子状物質がどのような機序で免疫反応を活性化し、獲得免疫を誘導するのかについては現在も完全には明らかにされていません。特にアラムに関しては80年もの間臨床の現場でワクチンアジュバントとして用いられているのにも関わらず、その作用機序は明らかにされておりません。免疫学者ですらそのメカニズムを理解していないということで、「Immunologist's Dirty Little Secret」と揶揄されております。さらに近年では環境中に存在する微粒子がアレルギー性炎症をはじめとする免疫性疾患を引き起こす原因であることも示唆されています。粒子状物質の免疫活性化の分子メカニズムを明らかにすることは、新しい粒子アジュバントの開発や粒子状物質によって誘導される炎症反応に対する新しい治療法へ応用できると考えています。

研究開始当時は産業医科大学の免疫学寄生虫学教室に在籍しており、産業医学研究課題の一つとして同大学産業生態科学研究所の森本先生にご支援を頂きながら研究を続けて参りましたが、2012年の7 月より、現在の免疫学フロンティア研究センターにて新しく研究をスタートすることになりました。当センターは免疫学研究にとっては最高の環境であります。しかしながら、私自身が免疫毒性学の分野では経験も浅く若輩者であります。是非とも免疫毒性学会の諸先生方のご指導、ご鞭撻の程を賜りたく宜しくお願いいたします。また少しずつ「Dirty Little Secret」を明らかにしていき、免疫毒性学会に貢献できればと考えております。今後ともよろしくお願いいたします。

 
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