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日本免疫毒性学会へ期待するもの
角田 文男
(第17〜19期日本学術会議会員 岩手医科大学名誉教授)

 日本免疫毒性学会は、医学、薬学、理学、農学等の諸分野の研究者から構成される学際的学会として2001年に設立され、国際的にユニークな学会と、その発展が大いに期待される。

 学際的領域における研究は、自分がこれまで専攻してきた学術・技術と違う、時には全く異なる科学分野の学術・技術を学び習得して、自分のそれに上乗せし、初めて取り掛かれる。また異なる科学分野の習得が、研究課題によっては更に、2、3分野を広げざるを得ないこともある。医学部卒業の研究者は、他の学部卒業研究者よりも他分野を多く習得しないと、学際的領域の研究に従事し難いものがあるように思う。

 筆者の場合、1958年に北海道大学大学院医学研究科へ進学し、畏敬の恩師 安倍三史教授(公衆衛生学)の薫陶を得て四年間の大学院生活を、「発がん性炭化水素による大気汚染に関する研究」に従事できた。

 この研究は、学際的研究の走りとも言えるもので、院生一年次には、北海道大学に当時一台しか設置しなかった薬学部分析化学研究室の高性能蛍光分光光度計による環境中の超微量の各種発がん性炭化水素定量分析法を分析化学研究室の研究員らと共同で確立した。

 院生二年次には、大学工学部機械工学科の研究員の協力で、自動車排気ガス捕集装置や極寒豪雪地帯における大気捕集装置の開発に成功した。これらの学際的研究によって得た分析法や大気捕集装置を駆使し、北海道の大気汚染現象の特徴を把握し、北海道中央部住民の肺がん死亡率との間に有意の関連を認めたとする論文を発表して学会から高い評価を得た。

 爾後ほぼ50年、齢80歳間近な今も、大気汚染研究論文や学会誌を読んで楽しんでいる。

 さて、日進月報の本学会の研究分野について、興味こそあれ、さすがに此の齢では到底追従しきれず、諦めざるを得ない。願わくば、現役から退いた老いた研究者を対象とした本学会の最近の歩みや興味深い研究内容を紹介してほしいものである。
 
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