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≪免疫毒性試験の国際動向,ICHガイドライン≫
免疫毒性試験に関するガイドライン等の情報(2011年12月〜2012年5 月)
学術・編集委員会

 前号から、学術・編集委員会では、MHLW(厚生労働省)、EMA(欧州医薬品庁)、FDA(米国食品医薬品局)、OECD(経済協力開発機構)などの各極規制当局あるいは国際機関から発表されたガイドライン等(案も含む)の中の免疫毒性試験に関する記載について、その内容を簡潔に紹介することにしました。本号では、昨年の12月から本年5 月までに公表されたガイドライン等の中から該当するものを記載しています。

1.FDA Draft Guidance:Scientific Considerations in Demonstrating Biosimilarity to a Reference Product(2012 年2 月)
ガイダンスの目的:バイオ後続品と既存のバイオ医薬品(以下、先行医薬品)との生物学的類似性を判断するための科学的アプローチに関するFDAの現時点における考え方
適用範囲:バイオ後続品
免疫原性評価に関する内容:バイオ後続品の類似性を判断する際の一項目として、臨床試験における免疫原性評価について記載。先行医薬品との間で免疫原性の比較を行う臨床試験を少なくとも一試験実施する。試験デザインは平行群間比較試験を推奨。先行医薬品との物性の類似性や先行医薬品で報告されている免疫原性の頻度やその臨床経過などに応じて免疫原性評価の規模と実施時期を考慮する。
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplia
nceRegulatoryInformation/Guidances/UCM291128.pdf

2 .WHO/IPCS(International Programme on Chemical Safety): Guidance for Immunotoxici ty Risk Assessment for Chemicals(2012年3 月)
ガイダンスの目的:免疫毒性のリスク評価に関して世界各国で使用することのできる国際的にハーモナイズされた指針。一般的な化学物質のリスク評価者向けに書かれており、これら評価者が免疫毒性専門家からのアドバイスの必要性を判断する際に有用。
適用範囲:化学物質全般
免疫毒性評価に関する内容:免疫毒性リスク評価の枠組みを示した上で、免疫抑制、免疫亢進、感作性とアレルギー反応、自己免疫と自己免疫疾患の四つの異なるタイプの免疫毒性についてレビューとリスク評価方法を具体的に記載。
http://www.who.int/ipcs/methods/harmonization/
areas/guidance_immunotoxicity.pdf

 本ガイダンスの内容は、本年の学術大会( 9 月15〜16日)の第一日目の特別講演でガイダンス作成の中心的役割を果たしたオランダ国立公衆衛生研究所のHenk Van Loveren教授から発表される予定。

3 .EMA Draft Guideline: Guideline on Quality, Non-clinical and Clinical Aspects of Medical Products containing genetically modified cells(2012年4 月13日)
ガイドラインの目的:ヒトの治療目的で使用される遺伝子改変細胞を含む医薬品の品質、安全性、有効性の評価についての考え方
適用範囲:遺伝子組換え細胞を含む医薬品(例えば、単一遺伝子疾患治療に使用される遺伝子組換え細胞、癌に対する免疫療法に使用される遺伝子組換え樹状細胞や細胞傷害性リンパ球など)
免疫原性評価に関する内容:臨床評価の薬物動態に関する項の中で、多くの患者において導入遺伝子産物または遺伝子導入細胞に対する免疫応答が起こる場合があるので、免疫原性のデータの収集が必要との記載あり。

4 .皮膚感作性試験代替法及び光毒性試験代替法 を化粧品・医薬部外品の安全性評価に活用す るためのガイダンスについて(2012年4 月 26日、厚生労働省医薬食品局審査管理課)
ガイダンスの目的:OECDテストガイドライン429(Skin Sensitization: Local Lymph Node Assay)として採択されているLocal Lymph Node Assayについて、化粧品・医薬部外品の安全性評価への活用促進を図るために、その実施方法の解説と必要な留意点等をとりまとめたもの。
適用範囲:化粧品・医薬部外品
皮膚感作性試験代替法に関する内容:OECDテストガイドライン429に記載されている試験手順および判定方法に加えて、試験実施上の留意点として、溶媒の選択、塗布濃度設定の方法、試験成立条件について記載。本試験法の運用方法に関する留意点としては、製剤の試験には利用できないこと、適正に実施されたLLNAで陰性/陽性の判定がされた場合には原則としてそれ以上の追加試験は必要とされないこと、適正に実施されたLLNAで陽性と判断された場合でも皮膚感作性の安全性を担保できる場合があること、LLNAによる皮膚感作性の利用または評価が不適切と考えられる場合には従来のモルモットを用いる皮膚感作性試験を実施することが記載されている。
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T120501I0010.pdf

5 .FDA Draft Guidance:Safety of Nanomaterials in Cosmetic Products(2012 年4 月)
ガイダンスの目的:化粧品に含まれるナノマテリアルの 潜在的な安全性上の課題の特定や安全性評価の枠組みの 作成を手助けするもの。
適用範囲:化粧品
皮膚感作性試験に関する内容:ナノマテリアルの安全性 評価を目的に実施する毒性試験の中で、最小限の実施項 目として、急性毒性、皮膚刺激、皮膚光刺激、変異原性/ 遺伝毒性、21-28日間反復投与毒性、亜急性(90日間)毒 性とともに、皮膚感作性が挙げられている。
http://www.fda.gov/Cosmetics/GuidanceComplianceRegul atoryInformation/GuidanceDocuments/ucm300886.htm
(補足)同時に、食品に関するドラフトガイダンスも発表 されている。
http://www.fda.gov/Food/GuidanceComplianc eRegulatoryInformation/GuidanceDocuments/ FoodIngredientsandPackaging/ucm300661.htm

6.FDA Guidance:S6 Addendum to Preclinical Safety Evaluation of Biotechnology-Derived Pharmaceuticals(2012年5 月)(ICH S6R1 の追補分のみ)
ガイダンスの目的:現行のICH S6ガイドラインの補遺として、ICH S6ガイドラインに記載されている動物種の選択、試験デザイン、免疫原性、生殖発生毒性およびがん原性評価の各項目についての明確化およびアップデート。
適用範囲:細菌、酵母、昆虫、植物および哺乳動物細胞を含む種々の発現系を用いて特性解析がなされた細胞に 由来する医薬品(以下、バイオ医薬品)
免疫原性評価に関する内容:バイオ医薬品の非臨床安全性評価における免疫原性評価の考え方を記載。非臨床試 験における免疫原性評価は、ヒトまたはヒト型化タンパク質のヒトにおける免疫原性を予測するものではない。抗薬物抗体の測定は、薬力学的マーカーの変化、薬力学的マーカーが利用できない場合での予期せぬ薬物曝露量の変化、または免疫介在性の反応(免疫複合体病、脈管炎、アナフィラキシーなど)の所見がみられた場合に必要。抗薬物抗体が検出された場合には、試験結果の解釈に与える影響を評価すべき。インビボ毒性試験において抗薬物抗体が検出され、薬理作用の維持を示す薬力学的マーカーがない場合には、中和活性を解析する必要あり。 http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplia nceRegulatoryInformation/Guidances/UCM194490.pdf

 
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