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≪免疫毒性試験の国際動向≫
WHO/IPCS 免疫毒性ガイダンス
(Harmonized Guidance of Immunotoxicity Risk Assessment)作成に向けた動きについて
手島 玲子
(国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部)

1.WHO/IPCS化学物質に対する免疫毒性リスク評価に関するガイダンス作成の目的
 WHO/IPCSは、オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)の免疫毒性アレルギー過敏症に関するWHO協力センターを中心に免疫毒性のリスク評価に関して、各国で用いることのできる国際的にハーモナイズされたガイダンスを作成することを目的としている。

 具体的には、化学物質に対する免疫毒性を、国際的に同意された方法を用いて評価し、これらの評価が適切なリスク管理に用いられることをめざしている。そのために、免疫毒性専門家よりなるワーキンググループを設置し、リスク評価を行う際の範例を示す作業を行う。

2.ワーキンググループ活動経緯
・2008.2.28-29:WHO/IPCS Scoping meeting for the development of guidance
  :RIVMセンター長であるHenk van Loveren教授を座長に、ヨーロッパ,米国EPAの免疫毒性専門家を中心に10名がオランダRIVMに集まりガイダンスのスコープにつき会合がもたれた。
・2008.12.1, 2009.2.26:Teleconference
・2009.4.27-29:WHO/IPCS Immunotoxicity drafting group meeting
  :オランダRIVMにて、2回目の会合がもたれた。この会合から、日本から手島が会議に加わった。ガイダンスのドラフト案(1−7章)の議論と、それぞれの章に書かれているリスク評価を行うための範例となる個別事例研究としてのモデル化合物の選定が行われた。ドラフト案(1−7章)は、異なったタイプの免疫毒性が議論されていて、1章:序論、2章:背景、3章:免疫毒性リスク評価のフレームワーク、4章:免疫抑制、5章:免疫促進、6章:感作性とアレルギー反応、7章:自己免疫誘発性、で構成された。また、事例研究のためのモデル化合物として、プラチナが6章のsensitizationの事例として、鉛が4章のimmunosuppressionの事例として、芳香剤が6章のsensitizationの事例として、HCBが5章のimmunostimulationの事例として、水銀が7章のautoimmunityの事例として、トリクロロエチレンが6章のneoantigenの事例として選ばれた。
・2009.10.1:プラチナの事例研究が提出され、事例研究報告の作成に関する専門家を加えた事例研究ワーキングチームが結成された。

3.今後の予定
 当初は、2009年度中に、2009年4月の会議で作成されたガイダンス案に加え,個別事例研究の結果を加えて,一般の方からのコメント募集のために公表される予定であったが、個別事例研究のまとめが若干遅れているため、個別事例研究のまとめの期限を2010年2月まで延ばし、ワーキンググループでの議論を経て、来年5−6月に一般の方からのコメント募集のために公表される予定となった。その後、ピアレビュー等を受ける必要があるため、ガイダンスが最終化されるのは、2011年になると思われる。

 免疫毒性学会の会員の先生方には、来年5−6月に一般の方からのコメント募集のために公開されましたら、是非、積極的なご意見をいただければと思っています。また、今後、日本としても身近な化合物を選択して、個別事例研究を行ってゆくことが重要と考えます。以上、WHO/IPCS 免疫毒性ガイダンス作成に向けた動きの経過報告とさせていただきます。
 
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