immunotoxicology.jpg
title1.jpg
≪第19回大会 年会賞≫
Human cell line activation Test(h-CLAT) を用いた医薬品のアレルゲン性評価
打田 光宏1 、土屋 敏行1 、宇梶 真帆2
斎藤 嘉朗2 、黒瀬 光一2

(1 : Meiji Seikaファルマ株式会社、2 : 国立衛研・医薬安全科学部)

 背景・目的:ヒトにおける医薬品のアレルゲン性を予測することは、患者様はもとより製造に従事する者の安全性確保ならびに企業にとって開発リスク軽減の観点から非常に重要なことである。これまでに全身性アレルギーの非臨床評価としてモルモットを用いたactive systemic anaphylaxis試験、passive cutaneous anaphylaxis 試験などの抗原性試験が実施されてきたが、ヒトへの外挿性に乏しく、未だ予測性の高い試験法は無いとされている。一方、in vitro皮膚感作性試験に関しては、ヒト単球様培養細胞(THP-1)を用いた human Cell Line Activation Test (h-CLAT)の有用性が認められ、標準化のためのバリデーション試験が現在進行中である。そこで我々は、h-CLATを外用剤の評価だけではなく全身投与用医薬品のアレルゲン性を評価する試験系として、応用することはできないかと考え、その有用性を検討した。

 方法:アレルゲン性副作用報告のある医薬品18物質に対して、定法1 )に従ってh-CLATを実施し、評価した。

 結果・考察:評価を試みた医薬品18物質のうち、CV75(75%の細胞生存率を示す被験物質濃度)の得られた11物質(ampicillin sodium、D-penicillamine、ticlopidine hydrochloride、cephalothin sodium、diclofenac sodium、levofloxacin hydrochloride、gefitinib、albendazole、amiodarone hydrochloride、carbamazepine、pravastatin sodium) はいずれも陽性であった。他の7 物質(phenitoin、hydrocortisone、penicillin G potassium、nevi rapine、ac e tyl sal i cyl i c ac id、al lopur inol、amoxicillin)は、水溶性又は細胞傷害性が低く、CV75が得られなかった。アレルゲン性副作用報告のある医薬品が陽性と判定されたことで、hCLATの有用性は部分的に確認されたが、水溶性又は細胞傷害性が低い物質は十分な濃度まで評価できないなど、課題がみられた。

 
P:陽性、N:陰性、TF:試験不成立、−:未実施

謝 辞
 この度、私たちの研究発表が第19回日本免疫毒性学会の年会賞に選ばれたことに驚き、大変光栄に思います。大会長の柳沢先生をはじめ発表内容にご指導、ご助言頂きました諸先生方に心より感謝申し上げます。

 今回の発表の後、フロアの先生からたくさんのご助言を頂きました。「Negative compoundは陰性と判定されるのか?」、「溶媒の種類はDMSO以外にもアルコールや界面活性剤など検討の余地があるのではないか?」「臨床で頻用されている薬を陽性と判定している時点でこの試験系はダメじゃないか?」「代謝物はどこまで考慮できているのか?」「CV75にこだわらず、評価できる最高濃度での結果を示すことにも意義はある。」「陽性となる濃度を基にリスク評価はできないか?」関連する論文の紹介など、その内容は報告した私たち自身も課題と感じていることや医薬品の臨床でのアレルゲン性情報など非常に示唆に富むものでした。私たちの研究はまだまだ途上です。アレルゲン性評価はその表現型(薬疹、肝炎など)やメカニズムも様々で、ヒト側の要因も大きいとも言われています。そのため、まだ抗原性試験に取り組んでいるのか、と言われることもあります。しかしながら、薬疹が原因で開発がストップしてしまう薬剤は予想以上に多いことも事実です。全身投与用医薬品の開発であまり抗原性試験を実施しなくなってきているのは、アレルゲン性を予測することが必要ないからではなく、良い試験系がないからであると考えます。

 今回の受賞と反響から、企業研究者への期待も強く感じました。日本の製薬企業を取り巻く環境は厳しいものですが、本学会を少しでも盛り上げていけるよう、これからも免疫毒性に関わる研究に携わっていきたいと思います。

  1. Development of an in vitro skin sensitization test using human cell lines: the human Cell Line Activation Test (h-CLAT). I. Optimization of the h-CLAT protocol. Ashikaga T, Yoshida Y, Hirota M, Yoneyama K, Itagaki H, Sakaguchi H, Miyazawa M, Ito Y, Suzuki H, Toyoda H. Toxicol In Vitro. 2006 Aug;20( 5 ):767-73.
 
index_footer.jpg