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理事長退任にあたって
 - 免疫毒性研究の新たな展開の期待
大沢 基保
(帝京大、(財)食品薬品安全センター)

 前学会長の名倉 宏先生から2002年4月に会務を引き継ぎ、幹事会・理事会のまとめ役の職責に追われているうちに、早くも2期6年間が瞬く間に過ぎてしまいました。この度任期を終え、澤田純一理事長にバトンタッチすることができ、ほっとしているところです。しかし、この任期中、学会にどのような貢献ができたかと顧みますと、もっといろいろなことが出来たはずと反省することしきりです。
 2007年大会(神戸)の総会の折に、簡単な総括を致しましたが、この任期中には学会の @組織形成、Aオープン化、B国際化 を学会活動の当面の方針として、理事の皆様とともに運営にあたってきました。
 @の組織形成については、運営委員会でのご提言をもとに学会の活力を支える組織基盤として評議員制を導入しました。あまり大きくない学会組織では、運営の中核となる理事に加えての評議員制は煩雑の感がありますが、学会活動の意識的な新陳代謝と若返りのために必要と考えています。今後は、会員−評議員−理事の間の意思疎通と流動性を促進すること、評議員諸氏に積極的な提言や役割を委ねることが、学会のアクティビティを保つ上で望まれます。
 Aのオープン化については、風通しのよい学会をイメージして、学会の運営と活動を会員にオープンにすることを企図してきました。そのために、広報担当理事により、年会の折に会員諸氏のご意見を伺うアンケートを実施してきました。さらに、学会の情報を文書伝達から電子化するため、学会ホームページの開設と会員メールシステムの確立を図ってきました。電子化は年来の願いとして、代々の事務局担当理事の多大なご尽力を経て現事務局にて実現することができました。ImmunoTox Letterもホームページに掲載され、バックナンバーを含めてダウンロードすることが可能となりました。これらにより、会員諸氏への情報提供と会員相互の意見交換が円滑となり、学会の活動と内容が会員各人にとってより身近になり得たものと思います。ただし、当面の開設経費のため学会会計を窮屈なものにしてしまい、会計担当理事や新理事長にご苦労をおかけすることが心残りです。ついては、会員諸氏には年度学会費の納入のお忘れなきことをお願いする次第です。
 Bの国際化については、本学会が免疫毒性研究の国際的な協力体制の窓口として実働できる体制をつくることでした。これに先行して、国際的な医薬品の免疫毒性試験ガイドライン作成の必要性から、厚生労働科学研究のICHプロジェクトに免疫毒性試験の研究班(澤田班)が組織されたが、その活動ではICH国際会議も含め本学会員が積極的な役割を果たしました。さらに、将来構想委員会の構想案にも、外国の研究者との交流を促進する提言が示されました。そのためには、英文ホームページの開設が必須でしたが、それもホームページ開設とともに何とかクリアでき、国際化の道筋を整えることができました。第12回大会(東京)以後、熱心な仲介を経て米国トキシコロジー学会(SOT)のImmunotoxicology Specialty Section (Director: Prof. Pruett)との間で、定期的に各例会に研究者を派遣することになり、にわかに交流が活発になってきました。また、Immunotoxicologyについての国際的な共同作業が必要なときには、学会がその窓口になる体勢も整ってきました。今後は、他の国々、とりわけアジアの研究者との交流促進が望まれています。

 このように、理事並びに会員諸氏のご尽力により学会運営に関する所期の目標はおおむね達成されつつあります。今後は、このような状況を活用し、学会の活動が質と量の両面で充実していくことを期待しています。
 免疫毒性研究には、従来の研究課題に加え、効率と確度のよりよい試験法の開発(試験法のIn vitro化やHigh through put化など)とハイリスク集団に対するTailor-made immunotoxicologyの展開、進歩の著しいバイオ環境(生物学的製剤、バイオ医薬品、バイオ食品、バイオ汚染物質など)やハイテク環境(ナノテク製品、新素材、電磁波など)に対する安全性評価の方法確立、増加しつつあるアレルギー疾患や自己免疫疾患の要因物質の解明と予防・治療法の開発・・・・などなど、新たな課題が山積しており、本学会に対する期待は高い。これまでの任期を通して、本学会の形成と発展に微力ながら職責の一端を果たすことができ、新たな期待に対する学会の展開にバトンを引き継げる幸いを感じています。この間における会員皆様のご協力、ご尽力にあらためて感謝申し上げます。
 
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